花粉症の主要因「スギ花粉」
スギは日本原産の常用針葉樹で森林面積は日本全国の森林の18%、日本全土の12%を占めています。このため日本の花粉症患者の約70%はスギ花粉が原因です。
世界的に見ると、スギ花粉症が多いのは、日本を含めた東アジアのごく一部で、欧州ではイネ科花粉症が多く、アメリカではブタクサ花粉症が多くなっていてスギ花粉症はあまり見られません。
そもそもスギは日本原産ですので欧米や中央アジアには、ほとんどスギ林はありません。ですので当然スギ花粉も飛ばないのです。
もともとスギは日本に自生していましたが、今日これだけスギ花粉症が増えたのには、戦後のスギ植林事業の影響が大きいと言われています。
戦後急速に拡大した住宅需要を満たすために日本政府は、成長が早く建材としての価値が高かったスギの植林に力を入れていたのです。
しかし、高度経済成長期には、海外からスギよりも安価で質もそこそこいい木材が輸入されるようになり、日本の林業は衰退していきました。
そして、人材も林業から離れていき、大量に植林されたスギの間伐や伐採もされず放置され、スギの個体数は増加していきました。
しかし、スギが植林されたのは日本全国というわけではなく、地域によって差があります。
北海道ではスギ花粉の飛散量は極めて微量で、亜熱帯の沖縄ではスギは生息しません。
スギの人工林が多い関東・東海地方ではスギ花粉症患者が多くなっています。ヒノキ花粉症も若干見られますが、ヒノキよりもスギの方が多いため、スギ花粉症の方が圧倒的多数です。
関西では関東とは違ってスギとヒノキ科の植林面積はほぼ等強い状態です。しかしながら、今のところヒノキ科は幼齢林が多く、東日本よりヒノキ飛散の割合が多い程度と考えられています。
スギは風によって花粉を運ぶ植物(風媒花)に分類されるので、虫などが花粉を運ぶ植物(虫媒花)よりも多量の花粉をつくります。また風媒花は花粉がより遠くまで運ばれるので花粉症の原因になりやすいと考えられています。原因となる花粉の種類は多様で、日本ではこれまでに50種類以上の原因花粉が報告されています。
風によって花粉が運ばれ花粉症を引き起こす風媒花には、樹木ではスギやヒノキの他にシラカバ、ケヤキ、ブナ、ハンノキ、コナラ、オオバヤシャブシ等があります。草本ではカモガヤなどのイネ科の花粉症が多いですが、他にブタクサ、ヨモギ等キク科の植物もあります。
主な花粉の飛散時期、つまり一般的に言われる花粉症の時期は、スギやヒノキなどの樹木では春頃が中心ですが、イネ科の場合は初夏に、キク科の場合は真夏から秋口となっています。
現在、地球の温暖化が世界的な環境問題として取り沙汰されていますが、この温暖化の影響でスギ花粉飛散数も増加することが予想されます。関東のスギ林密度が増加する傾向にあることは気象庁によるシミュレーションによって明らかになりました。従って花粉症患者の数はこれからも増加傾向となるでしょう。